- 2019.06.10 医療活動版
- 肝がん予防のために肝炎ウイルス検査を!
新居浜協立病院 医師
山岡 伸三
肝臓は「沈黙の臓器」
健診などで肝機能検査の異常はよく耳にします。肝臓は、様々な原因で障害を受けます。その中には慢性肝炎となり徐々に進行し、肝硬変そして肝がんまでに至ることがあります。
しかも問題なのは、かなり進行しないとさしたる症状を示さないことです。「沈黙の臓器」と言われる所以です。通院されている慢性肝炎、肝硬変患者さんも多くの方は無症状です。
より進行すると黄だん(白目や皮膚が黄色くなる)、腹水や下肢のむくみ、肝性脳症といって手が震えたり意識がおかしくなったりします。
肝がんの9割は肝炎ウイルスが原因
慢性肝炎や肝硬変の中から、肝がんが発症することになるのですが、その原因の9割は肝炎ウイルスが原因なのです。そのうちC型肝炎が約7割、B型肝炎が約2割と言われています。
例えばC型肝硬変の場合、1年間で約7〜8%の方に肝がんが発症します。すなわち5〜6年後には2人に1人が肝がんになる計算です。
肝がんは早期発見・早期治療で完治も
この肝がんに対する治療は目覚ましく進歩しています。
小さければ、手術による切除や細い針を刺して焼灼、血管からカテーテルを通して塞栓(がんを栄養する血管をふさぐ)など様々な治療があり、大きくなってしまっても、分子標的薬など薬物治療も進んできています。
慢性の肝臓病の方は、定期的に血液検査と画像検査(エコーやCT)を行って早期にがんを診断することが大切です。
肝炎ウイルスの感染
B型やC型の肝炎ウイルスは、主に血液や体液などで感染します。代表的なものは、性交、母児間(出産時)の感染です。またタトゥーやピアスの穴あけなども注意が必要です。普通の社会生活で感染することはありません。
昔は予防注射の回し打ちや輸血で感染しました。また、汚染した血液製剤で治療された方が感染し「薬害肝炎」として社会問題となりました。
現在の感染者数はB型、C型合わせて300〜370万人と言われています。その中には、感染を知らないまま生活(放置)されている方がたくさんおられます。
簡単に出来る肝炎ウイルス検査
肝炎ウイルスに感染しているかどうかを調べるには、少量の血液を取れば検査できます。
医療機関に定期通院されている方は、最寄りの医療機関でご相談ください。そうでない方は、各地の保健所や保健センターに申し込めば無料で検査を受けられます。
愛媛県は、肝がん死亡率が全国一です。県知事さんも肝炎対策に力を入れています。
B型肝炎もC型肝炎も治療薬の進歩は目覚ましく、ウイルスを消失させたり進行を抑えたりすることが可能になってきています。
一生に一度でいいですので、ぜひ多くの方が肝炎ウイルス検査を受けられることを期待します。
図1 肝がんエコー写真
(右肝臓の上方に径17mmのしこり)
図2 肝がんCT写真
(造影CTで肝がんと診断)