愛媛医療生協(しんぶん)

2019.07.09 医療活動版
熱中症と予防について

愛媛生協病院 研修医
芳我 悠毅(はが ゆうき)

熱中症になりやすい季節になってきました。熱中症は、約4割が住居、1割程度が仕事場であり、約半数が普段の生活の中で発生しています。去年の4月30日〜9月30日までの全国における熱中症による救急搬送人員数の合計は95,137人、愛媛県内では1,236人でした。読者の皆さんも、救急搬送とまでいかなくても、熱中症の症状を経験した方がいるのではないでしょうか?

熱中症にならないための予防は?
まず皆さんの頭の中に浮かぶのは「水分補給」ではないでしょうか?「水分を摂らなければいけない」という事は浸透していますが、「何を摂るか」ということは、浸透していないようです。そこで、今日は水分補給を中心に話していきたいと思います。
まず、買い物などでの外出や、軽い運動で少し汗をかく場合の水分補給は、水やスポーツドリンクで十分です。しかし、長時間の課外活動や激しい運動で多量に汗をかき、体から塩分を多く失った場合は経口補水液をオススメします。なぜなら、経口補水液はスポーツドリンクに比べ塩分が豊富に含まれているからです。
塩は人間の体で大切な働きをしています。例えば、消化と吸収を助ける働きをしたり、神経の働きにも大切な役割をしています。そのため、塩の摂り過ぎは良くないですが、不足もよくありません。市販されている経口補水液の塩分濃度は0.3%程度であり、汗の塩分濃度とほぼ同じなため、脱水状態から回復するためには、塩分濃度が高い経口補水液を摂るべきです。
経口補水液は家庭でも簡単に作れるので、一度試してはいかがでしょうか?

カフェインの利尿作用
ところで、お茶は水分補給として適しているのか質問される事があります。これは、お茶に含まれるカフェインの利尿作用により脱水症状が起きやすくなる、という事を聞いたことがあるからかもしれません。米国医学研究所によると、この説は普段からお茶やコーヒーなどのカフェインを含む物を摂取している方には当てはまらないことが明らかにされています。つまり、普段からお茶やコーヒーなどのカフェインを含む物を摂取している方はカフェインに耐性が出来るため、お茶も水分補給に適しているのです。また、運動中にカフェイン含有飲料を摂取しても、尿排泄量が増えたり、運動パフォーマンスに悪影響を及ぼしたりすることはないとされています。しかし、普段から全くカフェインを摂取していない人には多少利尿作用がありますので、注意して下さい。
水分補給以外にも、熱中症を予防する対策として、エアコンや扇風機を上手く使って28℃を目安に室内を快適な温度にする、のどが渇く前にこまめな水分補給をする、日頃から栄養バランスの良い食事と体力づくりをするといった事も心掛け、熱中症になりにくい体作りをしていきましょう。

家庭で出来る経口補水液
水1L
塩3g(小さじ1/2)
砂糖20〜40g(大さじ2と小さじ1〜大さじ4と1/2)
レモンなどの柑橘系の果物を絞ると飲みやすくなります。