愛媛医療生協(しんぶん)

2019.01.10 コラム
コラム 風を読む 2019年1月号

「蛇口をひねれば安全な水」。当たり前の水道に危機が迫っている。国民的な議論にならないうちに、水道事業の運営を民営化できる「水道法改正案」が成立した。全国で水道施設や管路が老朽化し、サービスを維持するには多額の費用がかかるため、民間委託すればコスト削減できるとしているが、果たしてどうか。
民営化されれば水道事業も営利を求めるビジネスになる。『日本が売られる』の著者である堤未果さんは、海外の多くの国で民営化が行われてきたが、「料金が2〜3倍に上がった」、「水道管が補修されず料金が上がった」などの事態が進み、この15年間で37ケ国、235自治体で再び公営化を行ったと伝えている。
公共事業は採算よりも水の安定供給や水質維持に努めなければならない。滋賀県の長浜水道事業団の自治体では民間への委託を減らし、自らの手による運営を強めようと「直営重視」を進めている。
新潟市議会は「災害発生時における応急体制や他の自治体への応援体制の整備等が民間事業者に可能かなど、住民の福祉とはかけ離れた制度。公共の福祉を脅かす事態となりかねない」と水道法改正案反対の意見書を採択した。
日本は安全な水が安定して供給される豊かな国である。供給に格差はつけられない。