愛媛大学で現在の医療問題について講義をする機会がありました。アメリカの無保険者四千七百万人という現実、日本の医療費抑制政策の下での後期高齢者医療制度、医師不足の現実、愛媛の地域医療の「崩壊」現象―自治体病院の縮小・再編、民営化の流れについて話しました。
若い人たちは、医療や福祉の現実にはあまり関心がないのかと思いきや、「アメリカの医療の実態を初めて知った」、「日本はそれほどでもないと思っていたが、医師数削減は閣議決定によるものだったのか」、「知人にも保険証のない人がいる」とか、関心を持って聞いてくれました。
最後に、協同組合で保健・医療活動をしている医療生協について話しました。地域の人々が出資金を出し合って医療機関や福祉施設をつくり、院所利用委員会で「参加する医療」をめざし、社会保障を良くする活動、平和を守る活動、明るいまちづくりを進める活動など、紹介しました。
多くの学生が「医療生協のことは初めて知った」、「住民が主体的に参加する、そんないい活動をしていたのか」と受け止めてくれました。「高校生一日病院体験で生協病院に行った」との感想が一人だけ!
まだまだ認知度が低い医療生協です。年度末に向けて、一まわり広く医療生協への加入を訴えましょう。
「毎日」正月号は「オバマの核なき世界」の連載で、2010年は「核兵器の拡散やストップをかけるために極めて重要」というオバマ米大統領の言葉を紹介しています。アメリカにとって、人類愛から出た理想主義的理念というよりは、安全保障上からの現実的判断であるとも言っています。つまり、「自爆テロを望む者に対し、報復の怖さで攻撃をとどまらせることはできない」と、従来の核抑止論に疑問を呈して、核兵器のない世界こそ安全だという主張です(シュルツ元国務長官)。
今も世界には、人類を幾度にわたって壊滅させられる2万6千発もの核兵器があります。米・ロ・仏・英・中の5カ国から、イスラエル・インド・パキスタンに、そしてイランや北朝鮮への拡散が心配されています。今こそ、世界から核兵器を全廃する方向性を共有するしか人類の未来はないのではないでしょうか。
戦後スタートした生協運動のスローガンは「平和とよりよい生活のために」でした。「平和」が先か「生活」が先かという議論もあったようですが、当時の中林会長は「よりよい生活は、平和があって初めて成り立つ」として、「平和」を冒頭に掲げたということです。私たち医療生協の代表をニューヨークに送り出す運動を成功させましょう。
愛媛県は昨年三月「医療費適正化計画」を決定しました。これは、「高齢者の医療の確保に関する法律」に基づいて策定されたものです。
この法律は聞きなれない方も多いかもしれませんが、小泉内閣の最後ごろに成立したもので、悪名高い「後期高齢者医療制度」や特定健診についても定めた法律です。
「医療費適正化」とは要するに医療費抑制をいかに進めるかということであり、愛媛県もその方針に忠実に同計画を策定。内容は、(1)療養病床を二六九九床削減する(老人施設に転換させる)、(2)入院日数平均を三五・九から三二・二日に三・七日短縮させる、(3)特定健診七〇%、特定保健指導四五%以上の実施率にする。その結果、二〇一二年の医療を三%余削減しようという計画です。
長く続いた自民・公明政権は、医療費抑制を何よりも重視して、「医療費が増えるのは医師が増えるのが問題だ」として、医学部定員を削減してきました。その結果が今日の医師不足、地域医療崩壊です。
いま、「医療費抑制政策」の明確な転換が必要なのです。民主党政権には、後期高齢者医療制度の廃止を直ちにしていただき、国民の安心の医療をという願いに応えてもらいたいものです。
一年前の当欄に沢内村を訪ねたことを書きました。その沢内村の深沢村長を描いた映画「いのちの山河 日本の青空II」がいよいよ封切りです。今月下旬松山で九日間上映予定。是非多くの人に見てもらい、来春にむけて、県下各地に上映運動をひろげてもらいたいものです。
生命尊重を政治の第一に据えた深沢晟雄のことを知らない保健・医療人はないほど著名です。国や県の指導(圧力)にも関わらず、老人医療・乳幼児医療の無料化を全国に先駆けて実現した村長です。「一部負担を徴収しないことは健康保険法には違反するかもしれないが、憲法二十五条には違反しない」と名言。
まともな医師を派遣してこない医学部とも正面から向かい医師確保を実現。そんな姿勢の村長には、それに応える医師が現れるもの。加藤邦夫院長や、それを継いだ増田進院長が病院医療と村の健康管理を統一して進めます。
何故深沢さんのような生命行政が生まれたのか探っていけば、戦前からの協同組合による医療が岩手には広く根付いていたことにつきあたります。住民参加の医療実践です。
いま、地域医療の危機が叫ばれる中、一人でも多くの人が観てほしい映画です。
先の総選挙は戦後史を変える結果と言ってよいものかも。国民が選挙で「政権交代」を実現したことの意味は大きいと思います。
それだけに民主党連立政権は国民の期待を裏切ることは許されません。
民主党マニュフェスト(公約)では、後期高齢者医療の廃止、欧州なみの医療費と医師養成、月額二・六万円の子ども手当、最低保障年金制度、生保の母子加算復活、出産一時金の五十五万円へのアップ、公立高校無償化等があります。
とりわけ「後期高齢者医療制度・関連法の廃止。廃止に伴う国保の負担増は国が支援する」という公約は重要です。
愛媛県においても、この法律に基づいて愛媛県後期高齢者医療広域連合が発足され、七十五歳以上の高齢者が加入させられました。保険料の年金天引き、七十代前半の二割負担等に怒りが爆発しました。
それだれではなく、「愛媛県医療費適正化計画」をきめて、入院日数の短縮、療養病棟の削減(ほぼ半減)、生活習慣病対策の強化等を推進しようとしています。政府管掌健康保険が「健康保険協会愛媛県支部」として法人化など保険者の再編もすすめられています。
医療費の抑制を何よりも重視する法律です。ただちに一度廃止すべきです。この秋は、早期に公約実現を迫る運動が重要です。
一〇~十一月は生協強化月間です。今年の月間では「いのちの大運動」が提起されています。
アメリカ発の経済危機と医療・福祉切り捨ての構造改革政治のおかげで国民生活はガタガタです。
国保の保険料が高くて払えない。医療費の窓口負担が高くて大変。健診の受ける手続きがわからない。親や配偶者の介護で悩みが多い。子育てで悩んでいる。首切りされて仕事が見つからない。
組合員や地域の中に渦巻くくらしの不安や要求を引き出して、協同組合らしく、解決の方向性を探る――それが「いのちの大運動」です。
支部では、組合員宅を地図付けして、あるいは機関紙配布網を利用して全組合員訪問で対話を進めましょう。
職員は、毎月一回以上地域訪問を計画して、くらしや健康について対話を広げよう。
国保や介護保険で困っている人がいれば、一緒に自治体を訪ねて解決の道を探りましょう。ケースワーカーが相談に乗ります。介護のことでの困りごとは医療生協のケアマネジャにご相談ください。
日常生活での助け合いが必要ならば、支部や班で助け合いの会を作ったり、食事会やサロン事業を立ち上げましょう。健康体操教室の開催や認知症サポーター養成も広げましょう。協同すれば可能です。
四月から要介護認定の制度が変わり現場に混乱が広がっています。
介護保険を利用するにはまず市町村に申請して「要介護認定」を受ける必要があります。訪問調査員による「基本調査」とコンピューターによる第一次判定|この項目が変更されたのです。全国的には約四割の人が第一次判定で従来よりも低い介護度となっています。松山市の認定審査会の担当医によると、六十九%が軽度へ変更されたということです。
軽度変更されると、「支給限度額」が下げられ、従来利用していたサービスを利用できなくなったり、利用量を減らさざるを得ません。「要介護」から「要支援」になれば、施設入所ができなくなり、介護タクシー等も利用できません。
今回の変更は厚労省の「介護費用適正化」の一環であり、介護費用削減のためだということが内部資料で明らかになっています。
国民の批判で、従来からの介護保険利用者の「更新」認定において低く判定された場合は従来の介護度とするという「経過措置」を導入しています。しかし新規申請の人は全員新たな基準で判定されます。一日も早く元の制度に戻してほしいものです。
九月に別府で開催される日本高齢者大会では介護保険制度の専門家・伊藤周平氏の講演があります。多くの参加を。
「死者の手が核をつかんで離さない」
(星歩)
核兵器廃絶を訴え続けてきた被爆者団体や日本の努力が、いま、核兵器のない世界を求める世界の声とし
て大きなうねりになろうとしています。
〇七年一月に米国のシュルツ、キッシンジャーなど歴代国務長官の四人が「核兵器のない世界を」の共同
論文を発表しました。今年四月には、オバマ大統領が、唯一の核兵器使用国としての道義的責任にふれ、各国
に核兵器廃絶への協力を呼びかけました。
北朝鮮による核実験の強行などの逆流もありますが、アメリカをはじめとした核兵器保有国が廃絶の先頭に
立つことがいま重要です。
核兵器廃絶に向けた大きな転換が行われようとしている時、来年五月のNPT(核拡散防止条約)再検討
会議はきわめて重要です。会議成功に向けて、いま世界中で「核兵器のない世界を」求める署名運動が取り
組まれています。医療生協は全国で百万筆を目標にしています。
愛媛医療生協は以下の行動に取り組みます。①「核兵器のない世界を」署名二万筆、②原水爆禁止世界大会へ代表派遣(広島三〇名、長崎五名)、③NPT再検討会議への代表派遣(ニューヨーク五名)とカンパ活動、④原爆症認定訴訟など被爆者と連携した運動。組合員のみなさんの参加を期待します。
医療生協の情報誌『コムコム』六月号に、タレントの山田邦子さんのインタビューが載っています。
テレビのバラエティ番組で乳がんチェックを医師から教わっていた時に、偶然自分の乳がんが見つかったそうです。「納得するまで医師と話し合うことが大切」。今は、いろいろな場面で「早期発見・早期治療の必要性」をしゃべっているということです。また、倍賞千恵子さんや鳥越俊太郎さんなど「がん友」でスター混声合唱団を結成して、がん患者さんを勇気付けるチャリティーコンサートなども開催しています。
この月刊雑誌は、全国の医療生協の健康づくり・まちづくりの先進事例が紹介されています。定価は四〇〇円ですが、愛媛医療生協の組合員さんの場合、半額助成しています。組合員・職員の学ぶ機会を何より大切に考えているからです。「医療生協は教育生協だ」という人もいるぐらいです。六月0七月の「教育月間」中に是非、定期購読の申し込みを。
六月0七月は「班会・班づくり月間」でもあります。医療生協の班は三人以上集まれば、どこでも開けます。みんなで健康チェック。看護師や栄養士、健康運動指導士などの専門家も参加して、健康学習も。既にある班もこの期間に開催して、一年間の計画をつくりましょう。
八〇年前の昭和四年、世界大恐慌がはじまった。翌年には農業恐慌による農産物の価格暴落、さらに前代未聞の大凶作と続いた。農村では夜逃げ、娘の身売り、青田売りなどが広がった。農民の健康―結核、トラホーム、赤痢などの感染症が社会問題となっていた。一方で無医村が激増した。開業医は金にならぬと村を棄て町に去った。庶民にとって医療はますます遠い存在になった。
この時、暮らしに追い詰められた農民たちが力を合わせて、協同の力で医療を確保する道を探った。農協の前身である産業組合が「医療利用組合」を組織し、出資金を募って、医師を呼び寄せて運営した。西条市の周桑病院はそんな時代に、周桑二〇町村の産業組合が九千人余の組合員から九万円余の出資金を集めてスタートした病院だ。
いま、平成の大恐慌。自公政府による医療構造改革で、後期高齢者医療制度の導入や療養ベッド削減がすすめられ、「無保険者」が増えている。私たちの周りにある、医療や介護の困りごと、年金や暮らしの悩みを集めて、協同の力で解決していく。自助、共助、公助の道を探る。まさに、医療生協出番の時だ。危機の時代は、チェンジの時、チャレンジの時でもある。
周桑病院も民営化の方向がささやかれるが、設立の精神に立ち返ってほしいものだ。