愛媛医療生協(しんぶん)

2020.03.09 トップニュース
花粉-食物アレルギー症候群:PFASを知っていますか?

 昨年3月、「オオバヤシャブシを探しています」の記事に、多くの方から情報提供を頂き、誠にありがとうございました。今治市で行った実態調査の結果を報告したいと思います。

「口腔アレルギー症候群」って、知っていますか

 果物や生野菜を食べると口の中がかゆくなったり、くちびるがはれたり、耳の奥がかゆくなったりする口腔アレルギー症候群(以下、OAS)という病気が、最近、増えています。
 OASの多くの人は、ある時から、それまで、おいしく食べていた果物や生野菜を食べると、イガイガするようになるために、食べるのを避けるようになってしまいます。
 全国的に、OASの患者が増えているのですが、愛媛県では、特に、今治市の島しょ部や沿岸部で、多くの人が静かに?口腔アレルギー症候群のため、果物などの食事制限を余儀なくされていることがわかってきました。

花粉が原因で口腔アレルギー症候群になる!?

 カバノキ科ハンノキ属のオオバヤシャブシという樹木の花粉にアレルギーになる(感作され)と、花粉の抗原と果物や野菜の抗原が、抗原としての構造が似ているため、ある程度以上の花粉症になると、一部の人でOASになってしまいます。この病気を、花粉食物アレルギー症候群(以下、PFAS)と言います。

今治市で実態調査

PFASの原因となるオオバヤシャブシの群生が確認されている今治市で、公立の小中学生とその保護者を対象に、2018年6月に、今治市教育委員会の協力のもと、アンケートによる実態調査を行って、約2万2千人から回答を得ました。
【結果】
①花粉症を自覚する者の割合は、児童・生徒:男子46.5%、女子43.1%、全体で44.8%。保護者:男性46.3%、女性51.3%、全体で49.2%で、非常に多くの人が花粉症に罹患していました。
②花粉症の有症状月は、4月・3月・5月・2月の順に、春季に多かった。
③PFAS・OASを自覚する者の割合は、児童・生徒:男子6.7%、女子8.0%、全体で7.3%。保護者:男性6.1%、女性12.8%、全体で
9.9%で、今治市に約1900名の患者がいることが推測されました。
④中学校区別で花粉症やPFASを自覚する者の分布は、全域で花粉症を約50%と多数認めました。花粉症患者のうち、PFAS・OASの症状もある者の割合が多いのは、島しょ部と沿岸部でした。
⑤OAS症状のあった食物として、延べ6013の食物があげられ、メロン・キウイ・モモ・リンゴ・スイカ等のカバノキ科花粉と関連した食物に対して症状を示す人が多くいました。
⑥OAS症状での受診歴は、児童・生徒32.1%、保護者15.9%と低く、OASを病気と思っていた人の割合は、児童・生徒33.8%、保護者39.3%と低く、多くの人が病気と思っておらず、受診もしていない状況でした。

今後の取り組み

PFAS・OAS患者が特に多いと推測される今治市で、オオバヤシャブシ花粉の暴露と発症との因果関係を明らかにするため、①今治市での花粉の飛散状況の調査(2/1~今治市大西町・波方町で実施中) ②今治市の小児を対象に、今治市の小児科医の協力を得て、問診と血液検査で、ハンノキ(オオバヤシャブシ)の感作と果物・野菜アレルギーの確定診断を行う ③PFASについてのリーフレットを作成して全県的に広く情報提供を行う、等の取り組みを計画しています。
 最近になって、果物や生野菜を食べると口の中がかゆくなるようになった方は、周囲にオオバヤシャブシがないかを確認して、PFASではないかと、かかりつけ医に相談してください。